
今回は『セクシュアルハラスメント』(以下『セクハラ』といいます)について詳しく知っていきましょう。
まずは『セクハラ』の定義と類型について解説してきます。
★目次(もくじ)
セクシュアルハラスメント『セクハラ』 定義
現代でよく見かける『セクハラ』とはどのようなものを言うのでしょうか。
『男女雇用機会均等法』という法律によれば、
①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、
②それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること
③又は性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること
をいいます。この法律により事業者にはその対策が義務付けられています。そして、職場における『セクハラ』は同性に対するものも含まれます。
『セクハラ』詳細解説 『対価型』と『環境型』
次に、これらの定義をもう少し詳しく見ていきましょう。
①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ
まず、『職場』とは以下の定義によります。
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所、または場所を指定し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば、『職場』に含まれます。
ということで取引先の事務所、出張先、打ち合わせで訪れた飲食店等であっても『職場』に含まれます。
また、時間外の宴会等であっても、実質上職務の延長と考えられるものはこの『職場』に該当します。
次に、『労働者』とは以下の定義によります。
正規労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規労働者を含む、事業主が雇用する労働者のすべてをいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業者のみならず、労働者の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる義務があります。
そして、『性的な言動』とは、
性的な内容の発言および性的な行動を指します。事業主、上司、同僚等に限らず、取引先、患者、学校における生徒なども『セクハラ』の行為者になり得るものであり、
また、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合等の、同性に対する行為についても含まれます。
そして、次の②と③について、
①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、
②それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること
③又は性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること
というものでは、『セクハラ』に対する反応や対応などが全く異なっているため、
②については、『対価型』のセクハラ
③については、『環境型』のセクハラ
と分類されています。現在の『セクハラ』は主にこの2種類に分類されることになります。
それぞれ見ていきましょう。
②それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること
このような行為は、『対価型』のセクハラと呼ばれます。
定義としては、
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること
などをいいます。
具体的な例として、
・職場にて事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること
・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること
・営業所内において事業主が日ごろから労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること
などが挙げられます。
そして次の
③又は性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること
などについては、『環境型』セクハラと呼ばれるものとなります。
定義としては、
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
とされています。
具体的な例として、
・事務所内において、上司が労働者の腰、胸などにたびたび触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下しているもの
・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ断続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
・事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと
などが挙げられます。
『セクハラ』の事例は多様であり、『セクハラ』に該当するかの判断については個々の事例により確認されることとなります。
しかし、基本的には受けた側の主観と認識に基づくものですから、『セクハラ』と感じた場合には迅速に行動するようにしましょう。
セクシュアルハラスメント『セクハラ』 にあったら 相談したいとき
もし自分が受けている行為について、これは『セクハラ』かもと感じた場合はどうしたら良いのでしょうか。
厚生労働省のセクハラに関する指針資料でもはっきり書かれていますが、まずは勇気をもって、
①はっきりと拒絶する
セクハラは、何も行動しなければ状況は改善されません。
意味もなく我慢したり、無視したりすると事態をさらに悪化させてしまうかもしれません。
不快と感じる性的な言動を受けたときは、はっきりと拒絶の意思を相手に示し、その行為がセクハラであることを相手に伝えましょう。
②社内の相談窓口、もしくは外部の相談窓口に相談
セクハラは、個人の問題ではなく会社の問題でもあります。自分で解決しようとするのではなく、速やかに会社の相談窓口担当者や信頼できる上司に相談し、会社としての対応を求めるようにしましょう。
取引先や顧客などからセクハラを受けた場合も、自分の勤める会社に相談してください。
もしこのような相談窓口がない場合は、厚生労働省が管轄する外部の相談窓口に相談しましょう。
『セクハラ』外部の相談窓口
何らかの理由で、『セクハラ』に悩み外部の相談窓口に相談したい場合は以下の2つの公的機関が良いと思います。
当然どちらも利用は無料で、事前にあなたの了承を得ずに、会社にあなたの情報を提供することはありませんのでご安心ください。
①都道府県労働局「雇用均等室」
全国の都道府県に設置されている厚生労働省管轄の労働局にある「雇用均等室」です。

②『総合労働相談コーナー』
こちらも全国の都道府県に設置されている厚生労働省管轄の労働局にあります。
こちらの窓口では、セクハラに限らず労働に関することの一切の相談を受け付けてくれるところですので、覚えておくと良いと思います。
なお『総合労働相談コーナー』については、こちらに詳細がありますので参考にしてみてくださいね。
https://shainnokimochi.com/article-labor-bureau-consultation/
労働は人生の一部ですから、生きている限り労働に関する悩みは尽きないものです。
そんなときは1人で悩まずに相談することで、必ず解決策が見つかると思っています。
今回は以上です。