
取引先の管理職や元請け業者の監督者からパワハラのような行為を受けた場合、直属の上司などからの行為と同じようにパワハラと言えるのかどうかについて今回は見ていきたいと思います。
★目次(もくじ)
パワハラの定義
まずパワハラの定義についての再確認ですが、
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
とされています。
その他についてはこちらに詳細があります。
https://shainnokimochi.com/article-pawahara01/
直属の上司、部下以外からでもパワハラと認められるのか?
そして、パワハラの定義の中で、
『職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に』
というものがありますが、今回のポイントはここです。
この定義の意味としては、
『当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が(通常であればそうであると考えられる)高い関係に基づいて行われること』
とされていますので、
職務上の地位や優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)、パワハラの類型に該当する行為があれば、それはパワハラと認められる可能性があるということになります。
ですので、同じ会社の上司や部下からの行為でなくても、パワハラに該当する行為そのものがあれば、それはパワハラであると認められることになります。
このようなものでパワハラと認められた判例
では、実際に裁判においてこのような直属の上司、部下以外からの行為についてパワハラと認められた判例を見ていきます。
原告の勤務先ないし出向先であることや、その人事担当者であるという優越的地位に乗じて、原告を心理的に追い詰め、長年の勤務先である被告会社の従業員としての地位を根本的に脅かすべき嫌がらせ
出向先の人事担当者が、出向元の従業員に対し嫌がらせ等の行為を行い、それがパワハラを構成すると判断された例となります。
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
直属の従業員に関係なく同じ職場内において、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為はパワハラにあたると考えられる例です。
Y社において宿直勤務中の見習い従業員Aが窃盗の意図を持って訪れた元従業員Bに殺害された事件について、安全配慮義務違反があったとして損害賠償の請求が認められた
これは少し異なる事例ですが、このような部外者からの心身への攻撃もいわゆるパワハラと言うべく、会社による安全配慮不足(放置)であるという、Y社の安全配慮義務の違反であると認められた例です。
このように直接関係のある上司、部下以外であってもパワハラの定義に該当する行為があればそれは「パワハラ」であると認められることになります。
もしこのようなことで困ったり、悩んだりしたときは『総合労働コーナー』に相談することも良いと思いますね。
https://shainnokimochi.com/article-labor-bureau-consultation/