
今回はマタニティハラスメント、通称マタハラについて見ていきたいと思います。
★目次(もくじ)
マタハラの定義
マタハラの定義としては、男女雇用機会均等法第11条の2を根拠に
①職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、
②妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により
③当該女性労働者の就業環境が害されること
とされています。
①では、職場において雇用する女性労働者が妊娠または出産したことについて
②では、妊娠または出産に関し厚生労働省が省令で定めている言動等によって
③では、当該女性労働者の就業環境が害されること
を定義しています。
そして、ここでいう職場とは、
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれる
と定められており、労働者が業務を遂行する場所であればそのすべてが含まれることになります。
また、厚生労働省が定めるものには具体的に以下のようなものがあります。
・妊娠したこと
・出産したこと
・産前休業を請求し、もしくは産前休業をしたこと、または産後の就業制限の規定により就業できず、もしくは産後休業をしたこと
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、または当該措置を受けたこと
・軽易な業務への転換を請求し、または軽易な業務に転換したこと
・妊娠または出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、もしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと
※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。
・事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間または1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外もしくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと、またはこれらの労働をしなかったこと
・育児時間の請求をし、または育児時間を取得したこと
・坑内業務の就業制限もしくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出もしくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと、またはこれらの業務に従事しなかったこと
などを理由として、
・解雇すること
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
・あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
・退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
・降格させること
・就業環境を害すること
・不利益な自宅待機を命ずること
・減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと
・昇進、昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
・不利益な配置の変更を行うこと
・派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
などが例示されています。
マタハラの類型
マタハラには主に以下の2つの類型があるとされています。
①「制度等の利用への嫌がらせ型」
これは、解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの、または制度等の利用の請求等または制度等の利用を阻害するものなど、次に掲げる制度または措置(制度等)の利用に関する言動により、就業環境が害されるものを言います。
・産前休業
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)
・軽易な業務への転換
・変形労働時間制での法定労働時間を超える労働時間の制限、時間外労働及び休日労働の制限並びに深夜業の制限
・育児時間
・坑内業務の就業制限及び危険有害業務の就業制限
・育児休業
・子の看護休暇
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
・育児のための所定労働時間の短縮措置
・始業時刻変更等の措置
②「状態への嫌がらせ型」
こちらは、解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの、または妊娠等したことにより嫌がらせ等をするものなど、女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する次のような言動により、就業環境が害されるものを言います。
・妊娠したこと
・出産したこと
・産後の就業制限の規定により就業できず、または産後休業をしたこと
・妊娠または出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、もしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと
※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。
・坑内業務の就業制限もしくは危険有害業務の就業
マタハラの典型例
ここではマタハラの典型例を見ていきます。
①「制度等の利用への嫌がらせ型」の具体例
・育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」などと言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている
・育児休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない、あなたもそうすべき」などと言われた。「でも自分は請求したい」と再度伝えたが、再度同様の発言をされ、取得をあきらめざるを得ない状況に追い込まれた
・上司、同僚が「所定外労働の制限をしている人には大事な仕事は任せられない」などと繰り返し、または継続的に言い、もっぱら雑務のみをさせられる状況となっており、就業する上で看過できない程度の支障が生じている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動なども含む)
・上司、同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ」などと繰り返し、または継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)
②「状態への嫌がらせ型」
・上司に妊娠を報告したところ「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」などと言われた
・上司、同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」などと繰り返し、または継続的に言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)
・上司、同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」などと繰り返し、または継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)
このような行為は、職場における妊娠・出産等に関するハラスメント行為に該当しますので注意が必要です。
もしマタハラにあったら 相談先
もし職場でマタハラにあったときはどうしたら良いでしょうか。まずは職場の内部相談先(人事部など)に相談することが先決です。
しかし、内部の相談先がなかったり、相談先がマタハラの当事者であったりする場合もあると思います。そのようなときは外部の相談先である
都道府県労働局「雇用均等室」
への相談をおすすめします。
この都道府県労働局「雇用均等室」は全国の都道府県に設置されており、厚生労働省管轄の労働局内にあり信頼できる機関です。連絡先は以下となっています。

万が一マタハラにあったら心身に影響が出る前に我慢することなく、早めに対処していけることが良いと思います。