
会社からの処遇や命令に納得できない場合などに、公的機関を利用した解決方法はどのようなものがあるのでしょうか。
まず、大きく分けてみると
①厚生労働省に関係する機関での解決
②裁判所での解決
の2つが考えられると思います。
そして、①厚生労働省に関連する機関での解決方法では主に
(1)総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談 による解決
(2)都道府県労働局長による助言・指導 による解決
(3)紛争調整委員会によるあっせん による解決
の3つがあり、
ここでは(3)紛争調整委員会によるあっせん による解決
について詳しく見ていきます。
なお、(1)総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談 については
https://shainnokimochi.com/article-labor-bureau-consultation/
(2)都道府県労働局長による助言・指導 による解決 については
https://shainnokimochi.com/article-labor-dispute-001/
にて詳しく書いています。
★目次(もくじ)
紛争調整委員会によるあっせん とは
厚生労働省に関連する機関を利用した会社との労働に関する紛争解決の方法の1つに
『紛争調整委員会によるあっせん』
というものがあります。
この『紛争調整委員会によるあっせん』の利用に関しては、まず、
(1)総合労働相談コーナーへの相談から始まり、
相談のみで解決しない場合に、
(2)都道府県労働局長による助言・指導
か
(3)紛争調整委員会によるあっせん
による解決を目指していくことになると思います。
そして、今回の
(3)紛争調整委員会によるあっせん による解決
とは、
紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度
のことを言います。
紛争当事者の間に公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確認し、両者に対し、事案に応じた具体的なあっせん案を提示するというものです。
利用方法 手続きの流れ
『都道府県労働局雇用環境・均等部』、『最寄りの総合労働相談コーナー』に、『あっせん申請書』を提出することで、『あっせんの申請』を行います。具体的な流れは以下です。
<職場におけるトラブル・紛争>
↓
<都道府県労働局>(総合労働相談コーナー)
・あっせん申請書の申請(あっせん申請書の提出)
↓
<あっせんの調整>
① 都道府県労働局長が、紛争調整委員会へあっせんを委任
② あっせんの開始通知( あっせん参加・不参加の意思確認)
③ あっせん期日(あっせんが行われる日)の決定、あっせんの実施
当該あっせんの委員が
・紛争当事者双方の主張の確認、必要に応じ参考人からの事情聴取
・紛争当事者間の調整、話し合いの促進
・紛争当事者双方が求めた場合には両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案の提示
などを行います。
*紛争調整委員会とは
弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されています。
この紛争調整委員会の委員の中から指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施します。
↓
<あっせんの結果> → 解決!(終了)
未解決の場合
↓
<あっせんの打ち切り>
または
<他の紛争解決機関の説明・紹介>
なお、あっせんで合意できない場合には、裁判所での解決を図っていくことが予想されます。
紛争調整委員会によるあっせんの特徴
①手続きが迅速・簡便
長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便です。
②専門家が担当
弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である紛争調整委員会
の委員が担当します。
③利用は無料
あっせんを受けるのに費用は一切かかりません。
④合意の効力
紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の
和解契約の効力を持つことになります。
⑤非公開(秘密厳守)
あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシーは保護されます。
⑥不利益取扱いの禁止
労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その
他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。
解決を目指せる紛争例
『紛争調整委員会によるあっせん』によって解決を目指すことのできる紛争例は以下のようなものです。
① 解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
② いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
③ 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争
④ その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社の所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争
『都道府県労働局長による助言・指導』によって解決を目指すことができる『募集・採用に関する紛争』は、あっせんでは取り扱うことができませので注意が必要です。
実際に解決した事例
それでは実際に、『紛争調整委員会によるあっせん』のよって解決された労働紛争の事例を紹介しておきます。
<紛争事例その1>
事業主は、労働者A・Bの退職に際し、退職金制度がないので、口頭で退職
金の支給を約束し、支払交渉を行った。
しかし事業主とA・Bが望む金額の隔たりが大きく、度重なる交渉で感情的な対立も激しくなり、当事者同士の話し合いが不可能になったため、労働者と事業主が連名であっせん申請を行った。
↓ 紛争調整委員会によるあっせん
あっせんの結果、Aに○万円、Bに△万円支払うことで合意が成立した。
<紛争事例その2>
申請人は、会社から事業縮小を理由として整理解雇の通告を受けた。
事業縮小に伴う人員削減については仕方がないと思うが、突然の解雇で生活設計に大きな影響があり、整理解雇対象者の人選についても納得がいかないため、賃
金○カ月相当額の補償金の支払いを求めてあっせん申請を行った。
↓ 紛争調整委員会によるあっせん
あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。
このように『紛争調整委員会によるあっせん』は無料ですし、第三者の支店による客観的な合意の形成が目指せる制度ですので、
会社の処分や命令に納得でなきない、従う理由がないなど、労働に関するトラブルがあった際には心強い味方になるものです。