
ここでは、働く人が知っておきたい労働基準法の重要事項、ポイントについて解説していきます。
なお、労働基準法とは正社員やアルバイトなどの名称を問わず、全ての労働者に適用されるルール(法律)で、ここでいう労働者とは以下をいいます。
①職業の種類を問わない
②事業または事務所(使用者)に使用され
③賃金を支払われる
というもので、基本的にほとんどの労働者があてはまることになります。
★目次(もくじ)
労働者が働くときの重要事項(ポイント)
労働者として働く場合、使用者から以下の重要事項について提示されることを必要とします。
・労働条件の明示
・賃金
・労働時間
・休憩・休日
・割増賃金
・年次有給休暇
・解雇・退職
・就業規則
順番に解説していきます。
労働条件の明示
労働条件の明示に関するポイントとしては、明示義務のある条件が適切に明示されているかと、書面にて交付義務がある条件については、きちんと交付されているかというところになります。
労働基準法第15条第1項と労働基準法施⾏規則第5条により、使用者は労働者を採用するときは、以下の労働条件を明示しなければなりません。
必ず書面にて明示しなければならないこと
①契約期間に関すること
②期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③就業場所、従事する業務内容に関すること
④始業・終業時刻、休憩、休日に関すること
⑤賃⾦の決定⽅法、⽀払時期に関すること
⑥退職に関すること(解雇の事由を含む)
労働基準法で、以上については必ず書面(就業規則を含む)に明示し労働者に交付する必要があります。もしこれらのものについて書面にて明示されていない場合は念のため確認しておきましょう。
そして、以下の条件については、定めがあれば明示が必要とされているものとなります。
①退職手当に関すること
②賞与などに関すること
③食費、作業用品などの負担に関すること
④安全衛生に関すること
⑤職業訓練に関すること
⑥災害補償などに関すること
⑦表彰や制裁に関すること
⑧休職に関すること
⑨昇給に関すること
賃金
賃⾦に関するポイントとしては、通貨払いであることと、全額払いが基本で勝手に控除できないことなどになります。
労働基準法第24条にて、以下が決められています。
①通貨払い
賃⾦は通貨(お金)で⽀払う必要があり、現物⽀給などは禁⽌です。
②直接払い
労働者本人に直接払う必要があります。(労働者の代理人や親権者等への⽀払は不可)ただし、労働者の同意があれば銀⾏振込などは可能です。
③全額払い
賃⾦は当該定め分を全額を⽀払う必要があります。所得税などの法令の定めがあるものや、労使協定で有効に定めたもの以外は控除できません。
④毎月1回以上払い
毎⽉少なくとも1回は賃⾦を⽀払わなければなりません(賞与等は除く)。
⑤一定期日の払い
「毎⽉○日」というように、周期的に到来する⽀払期日を定めなければなりません(賞与等は除く)。
また、最低賃金については、最低賃⾦法第4条により、例え労働者の同意があったとしても最低賃⾦額を下回ることはできません。
最低賃金は各都道府県ごとに違いますので、該当の都道府県にてご確認ください。
労働時間
労働時間に関するポイントは、1日の上限は8時間、1週40時間というところです。
ただし、10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は44時間です。また、変形労働時間制などの特別な労働時間制を採用する場合はこの限りではありません。
根拠は、労働基準法第32条、第40条となります。
そして、この基本時間を超えて働かせる場合には、あらかじめ使用者と労働者の間で労使協定(36協定と呼ばれているもの)を締結すし、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第36条)。
ですので、この36協定が締結されていないのに残業をさせることは違法行為となります。
休憩・休日
休憩については、1日の労働時間が
6時間を超える場合:45分以上
8時間を超える場合:1時間
の休憩を勤務時間の途中でまとめて与えなければなりません。
また、休憩時間は原則として、労働基準法第34条により、一⻫に与え、かつ⾃由に利用させなければなりません。
しかし、休憩時間が労働者の裁量に任されているなどの場合には特に問題ありません。
休日については、労働基準法第35条により、少なくとも1週間の間に1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。これは法定休日と呼ばれているものです。
また、この休日(法定休日)に労働させる場合にも、労働基準法第36条により使用者と労働者の間で36協定の締結・届出が必要となります。
ですので、36協定の締結がなされていないのに、休日出勤させることは違法行為となります。
ここで注意しておきたいのですが、これは法定休日の話であり、所定休日は関係ありません。
割増賃金
残業や深夜時間帯手当などの割増賃金に関するポイントとしては、労働基準法で計算式が決められているところです。
労働基準法第37条によって、時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時)を⾏わせた場合には、割増賃⾦を⽀払らわなければなりません。
その計算式は以下です。
割増賃⾦率 | |
時間外労働 | 2割5分以上 |
休 日 労 働 | 3割5分以上 |
深 夜 労 働 | 2割5分以上 |
時間外労働について、1か⽉60時間を超えるものについての割増賃金率は5割以上という定めがありますが、中小企業は猶予されています。
また、割増賃⾦の算定式は以下となっています。
割増賃⾦額 = 1時間当たりの賃⾦額 × 割増賃⾦率 × 時間外労働などの時間数
年次有給休暇
労働基準法第39条によって、雇い入れの日(試用期間含む)から6か月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者には年次有給休暇が与えられます。
具体的な付与日数など、有給休暇についてはこちらにてご確認ください。
https://shainnokimochi.com/article-paidholidays/
解雇・退職
解雇のポイントは、使用者は合理的な理由がなければ労働者を解雇できないというところです。
労働基準法第20条により、使用者はやむを得ず労働者を解雇する場合は、30日以上前に予告するか、解雇予告⼿当(平均賃⾦の30日分以上)を⽀払う必要があります。
また、労働基準法第19条のより、業務上の傷病や産前産後による休業期間およびその後30日間は、原則として解雇できません。
退職のポイントは、有期雇用契約や年棒制でない限り、退職の申し出から最短で2週間経過後に退職することができます。基本的に労働者の退職は、法律に抵触しない範囲でいつでも自由に行うことができます。
退職の最短期間の考え方については、こちらで確認できます。
[blogcard url=”https://wiify07.com/blog-resignation-period01/”]
就業規則
就業規則についてのポイントは、作成されているか、必要事項が正しく記載されているか、しっかり周知されているかという点になると思います。
労働基準法第89条によって、常時10人以上の労働者を使用している場合は、就業規則を作成する義務があります。
また、労働基準法第89条によって、作成した就業規則は労働者代表の意⾒書を添えて、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。また、就業規則の内容を変更した場合も同様です。
就業規則に必ず記載しなければならないことは以下です。
①始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
②賃⾦の決定⽅法、⽀払時期などに関すること
③退職に関すること(解雇の事由を含む)
また、定めをした場合に記載しなければならないことは以下です。
① 退職手当に関すること
② 賞与などに関すること
③ 食費、作業用品などの負担に関すること
④ 安全衛生に関すること
⑤ 職業訓練に関すること
⑥ 災害補償などに関すること
⑦ 表彰や制裁(懲戒)に関すること
⑧ その他全労働者に適用されること
なお、懲戒内容などは、具体的に定めがない場合には当該処分をすることはできません。
就業規則の有効性を考えるときには、実際に周知されていたかなどの周知性も問われます。周知されていない、労働者が自由に閲覧できない状態の就業規則の有効性は認められないこともがあります。